脳損傷の患者の脳内温度測定は脳血流や代謝の指標になるかもしれない

Significance of differences between brain temperature and core temperature (delta T) during mild hypothermia in patients with diffuse axonal injury.

E. Suehiro, H. Fujisawa, H. Koizumi, S. Nomura, K. Kajiwara, M. Fujii, and M. Suzuki.

Neurologia medico-chirurgica 51, 551-555, 2011.

脳温は脳血流、脳代謝など様々な因子によって支配されており、脳温測定はベットサイドで行える簡便な神経モニタリングの一つである。そこで、我々は脳温測定の臨床的意義について検討した。対象は重症頭部外傷の患者11例である。6例については頭蓋内血腫の除去目的に開頭術(外減圧)を行い、5例についてはびまん性脳損傷の対して保存的加療を行った。全例において脳低温療法を行い、脳実質内の温度(脳温)、膀胱温(深部体温)、頸静脈球酸素飽和度(SjO2)を連続測定した。SjO2とは、脳血流と脳酸素代謝の比を表す。脳温と深部体温の差を⊿Tとした。⊿Tと脳灌流圧の間には有意な相関関係は認められなかった。また、保存的加療を行った患者群において⊿TとSjO2の間に有意な相関関係を認めることができたが、開頭術を行った患者群では認められなかった。つまり、開頭術を行った群では頭蓋外環境の影響があったものと考えられた。保存的加療群においては、⊿Tの上昇(脳温の上昇)はSjO2の上昇、つまり脳血流の上昇(あるいは脳代謝の低下)を意味すると思われる。本研究によって、今後ベットサイドでの脳温測定が脳循環代謝の指標になる可能性が示唆された。