スフィンゴシルホスホリルコリンは、線維芽細胞においてFyn-RhoA-ROCK経路を介してストレスファイバー形成を引き起こす(生体機能分子制御学分野)

Sphingosylphosphorylcholine induces stress fiber formation via activation of Fyn-RhoA-ROCK signaling pathway in fibroblasts

D. Xu, H. Kishi, H. Kawamichi, K. Kajiya, Y. Takada, ans S. Kobayashi.

Cellular Signalling, 24, 282–289, 2012.

 近年、スフィンゴ脂質の一種であるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)が、アクチン細胞骨格の再配列を引き起こす事が報告されている。これまでに我々は、Fynチロシンキナーゼが、線維芽細胞においてSPCによるアクチンストレスファイバーの形成に関与する事を報告したが、そのシグナル伝達経路は未解明だった。

 本研究では、Fynの下流において、RhoA-Rhoキナーゼ(ROCK)シグナル経路が、線維芽細胞でのSPCによるストレスファイバー形成を制御する事を明らかにした。SPCによるストレスファイバー形成は、Rhoの機能を阻害するC3 transferaseや、RhoAおよびROCKのドミナントネガティブ変異体によって、抑制された。更に、SPCはRhoAを活性化し、この活性化は、Fynの阻害薬やFynのドミナントネガティブ変異体によって、抑制された。Fynの活性型変異体(ca-Fyn)は、ストレスファイバー形成を引き起こすと共に、ストレスファイバー末端のF-actinと共局在し、これは、エイコサペンタエン酸によって、抑制された。一方、ROCKの阻害は、ストレスファイバーの形成を抑制したが、ca-Fynの局在には影響しなかった。

 本研究結果は、線維芽細胞でのSPCによるストレスファイバー形成のシグナル伝達経路において、Fyn-RhoA-ROCK経路が関与する事を示したものである。