温熱ストレスによる炎症性遺伝子発現の抑制(医化学分野)
R. Takii, S. Inouye, M. Fujimoto, T. Nakamura, T. Shinkawa, R. Prakasam, K. Tan, N. Hayashida, H. Ichikawa, T. Hai, and A. Nakai.
Heat shock transcription factor 1 inhibits induction of IL-6 through inducing activation transcription factor 3. J. Immunol. 184, 1041-1048, 2010.
すべての生物は、その生存温度より数度の温度上昇を感知して一群の熱ショック蛋白質を誘導して対応するシステムを備えている。この応答は熱ショック応答と呼ばれ、熱ショック転写因子HSF1によって主に転写のレベルで制御される。HSF1は個体発生の過程での重要な役割を担っている。我々は、以前の研究から、HSF1が免疫応答、特にT細胞依存性のIgG産生に関与していることを見いだしていた(Inouye et al. J.Biol. Chem. 2004)。熱ショック蛋白質群の発現制御とともに、一部はIL-6遺伝子の発現制御を介していた(Inouye et al. J. Biol. Chem. 2007)。炎症反応と熱ショック応答との接点をさらに追求するため、HSF1によるIL-6発現制御の生理的意義とその分子機構の解明を進めてきた。驚いたことに、この経路は発熱•炎症応答のフィードバック制御に重要な役割を担っていることを見いだした。本研究により、発熱により活性化されるHSF1が炎症性サイトカインの発現の多くを抑制すること、その抑制機構には上流配列に直接結合するだけでなく、多くの遺伝子群でATF3を介していることが分かった。また、HSF1は多くの炎症性サイトカイン遺伝子の上流に結合して、クロマチンを開いた状態に保つことで発現制御を助けていた。これらの結果は、熱ショック応答が炎症反応の制御に密接に関わっていることを示唆している。