第12回生体恒常性とストレスセミナーを開催しました

 第12回生体恒常性とストレス応答セミナーが、2012年5月15日(金)に山口大学医学部総合研究棟8階セミナー室において開催されました。今回は、村田茂穂先生(東京大学大学院薬学系研究科・蛋白質代謝学教室・教授)をお招きし、「プロテアソーム研究の最前線」というテーマでご講演いただきました。

講演では、最初にプロテアソームの多様性について述べられました。脊椎動物のプロテアソームの一般的な構造は19Sと20S の複合体からなり、20Sを構成するb1、b2、b5は酵素活性を持つ分解のキーとなるサブユニットである。免疫系組織には、20S の一部のサブユニットがb1i、b2i、b5iと入れ替わっている「免疫プロテアソーム」と、さらにb5iがb5tに入れ替わっている「胸腺プロテアソーム」があり、主に胸腺プロテアソームについて丁寧に解説していただきました。胸腺プロテアソームの役割は、胸腺皮質上皮細胞(cTEC)において、主要組織適合抗原複合体(MHC1)が提示するペプチド抗原に、T細胞抗原レセプター(TCR)対する特異的性を与えているのではないかという仮説を示されていました。次いで、プロテアソームの形成機構について述べられました。免疫沈降法とMASS解析を用いて、プロテアソーム構築に必要なシャペロン分子PAC1-4を同定し、PAC1-2、PAC3-4のヘテロダイマーがそれぞれプロテアソーム20Sの構成を補助していることを示されました。また、プロテアソームのサブユニットを一つずつノックダウンすることで、プロテアソーム形成時にサブユニットが組まれていく順番を明らかにされていました。更に、癌病態やその他の疾患、老化や発生におけるプロテアソームとの関連についての最新の情報も紹介していただけました。蛋白質分解のバランスで蛋白質の恒常性を保ち細胞の正常な状態を維持しているというプロテアソームの役割は、HSFによる蛋白質恒常性の維持について研究している私にはとても興味深い話でした。

質疑応答では、用意していた時間枠をこえてしまうほどに満席に近い研究者の方々から多数の質問が上がり、活発な討論が行われました。今回の講演は、プロテアソームに関する基礎的な知識と最新の情報を深く知る良い機会となりました。

 (医化学分野 高木栄一)