第16回生体恒常性とストレス応答セミナーを開催しました

上記セミナーが、2014年5月23日(金)に山口大学医学部総合研究棟8階セミナー室において開催されました。今回は、石原直忠先生(久留米大学分子生命科学研究所・教授)をお招きして「ミトコンドリアのダイナミクスと細胞機能制御」というテーマでご講演いただきました。ミトコンドリアは太古の昔に共生により生じた細胞内小器官で、酸素とグルコースから二酸化炭素と水を作る過程でエネルギーを産生しています。講演では、ミトコンドリアの形態形成を中心にその分子機構についてお話しされました。ミトコンドリアの形態は特徴的で、一般的に細胞質全体に管状の網様構造を形成して分布し、動的に分裂と融合を繰り返しています。石原先生はDrp1というミトコンドリアの分裂因子に注目し、Drp1を欠損した細胞及びマウスを作製して生化学的、細胞生物学的解析を行いました。Drp1欠損細胞ではミトコンドリアの分裂に異常を起こしますが、正常細胞と同様に増殖してミトコンドリアの呼吸活性もほぼ正常でした。しかし、Drp1の全身欠損マウスは胎生12.5日以降に致死となり、また神経特異的Drp1欠損マウスは神経形成不全となることを明らかにしました。つまり、少なくともミトコンドリアの分裂は、神経細胞の機能維持に重要であることがわかります。さらに、ミトコンドリアの分裂とミトコンドリアDNAからなる核様体形成についての関連についてもお話しされました。本講演で、ミトコンドリアはその機能の恒常性のために絶えずダイナミックな変化を行っていることがよくわかりました。一方で、その分子機構は不明な点が多く、質疑応答では、用意していた時間枠をこえてしまうほどに研究者の方々から多数の質問が挙り、活発な討論が行われました。

譚 克(医化学分野大学院生)