我が愛するカープ 
−カープはいかにして弱くなってしまったか−
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1 私の子ども時代と懐かしい黄金期

 カープの黄金期と言えば、やはり昭和50年の初優勝から、以後、常時上位を占めた10年間であろう。その主力選手は山本浩二や衣笠であり、その将はもちろん古葉監督であった。脇役も自分の役割に徹し、バントはできて当たり前、ダブルプレーは取れて当たり前の潔癖の戦い方であった。守備要員としては木下とか中尾がいて、いつも堅実な守備を披露していた。代走には深沢がいた。また代打では、萩原、そして現在コーチをしている内田がいた。抑えとしては昭和50年の話だが、宮本という投手の投球が圧巻であった。もちろんあの跳び蹴りの宮本である。彼は外野フライでも負けというノーアウト満塁という究極の場面に出てきて、それでも抑えてきた。今からすれば信じられない守りだ。当時の古葉監督が妥協を許さない厳しい指導に徹したお陰で、そのような類まれな強いチームができあがったのだろう。


 でも最近のカープを見ると、バントが成功するのはきわめてまれ、ダブルプレーが取れたらありがたやという感じになった。最初こそ、怒りがあったが、毎回そうなので、もうファンもチームの慣れっこになった感すらある。コーチもあまり反省の色が見えない。どうしてそうなってしまったのか。


 確かにルーツ、古葉監督が現れるまでのカープと言えば、現在と同じミスのオンパレードだった。私がはじめて市民球場に行ったのが、小学校高学年だっただろうか。その時は、あの古葉監督もまだ選手でいたし、興津、漆畑とかの名前がスコアボードにあった記憶がある。外木場もまだ若手投手であった。確か竹野という内野手が巨人戦でトンネルエラーをしたのを覚えている。当時はトランペットとかなかったから、ヤジも鮮明に聞き取れた。「やめーや」とか「代えーや」というヤジが選手まで確実に届いた。あるとき根本監督に対して「根本、興津に三振のサイン出すな」という気の利いたヤジまで飛び出した。でもみんなカープを愛していた。出来の悪い息子に対するように。


 当時中学3年くらいだった私は、友達と日曜にラジオを携えてキャッチボールをしていた。当時のRCCのアナウンサーと言えば上野隆宏であり、また解説はあの金山次郎であった。対ヤクルト戦なんかはお互いひどいプレーのオンパレードで、金山次郎はいつも決まって、「内野はざるですね。草野球ですよ」と吐き捨てるように言った。また次には決まって「でも今の選手は幸せですよ。」「飛行機で移動できるんですから。僕たちの現役の頃は、2等列車でそりゃー悲惨なものでしたよ。」というおきまりの苦言が続いたのも懐かしい。そして試合終了近くになるといつも「せめて明日につながるプレーが欲しいですね。」というセリフが毎試合のごとく語られた。でも僕はその明日はいったいいつ来るんだろうとばかり思っていた。


 僕と友達は盆明けくらいか、いつも友達の親戚の家に泊まり込みで阪神戦を見に行っていた。当時は江夏が出ると、からっきし打てず、カークランドか田淵に一発を浴びて敗れるというのがおきまりのシナリオだった。ある時、先頭バッターの三村がレフトにホームランを打って、こりゃ幸先いいぞと思ったのもつかの間、それ以後最後までノーヒットというまさに隅1で負けの試合があった。当時は、下位の常連がカープ、ヤクルト、大洋(現在の横浜)で、優勝争いのチームがそれらのチームに負けると死に馬に蹴られると言われたものだ。


 当時のファンは今みたいなお行儀のいい人ばかりではなく、酔って注意書きの看板を蹴り倒す人とかも目の当たりにした。でもその人は次の日も同じ服を着て球場に着ていたが。それを見ていた私も私だが。そのくらいカープに愛着があったのだろう。


 また懐かしい別当監督の時代に開幕5連敗したことがあったが、その時には市民球場の正面玄関のガラスが割られ、重松球団代表が涙で自粛を願うというシーンもあった。そのくらい熱狂的であった。今は、行儀が良くなった反面、弱いと関心もなくなる人が多い。
 当時、犬の散歩をするおじさんの片手には必ずと言っていいほどラジオがあったし、山本浩二がホームランを打ったときなどは、静けさの染み渡った町から急に拍手と歓声が湧き上がったものだ。
 広島でタクシーを使うと運ちゃんが必ずカープの話題をもちかけてくる。またカープが勝ったか負けたかは、試合終了後のタクシーの走る勢いでを見ればわかる。またお好み焼き屋もカープの話題でもちきりだった。そのようなひどい時期を経て、ようやく負け犬から脱し、文字通り常勝軍団となった。その完璧さにファンが飽きてしまったこともあろう。それ以後も野村、緒方、前田らの活躍で第2期の黄金時代を迎えたが、彼らの年齢が増すにつれてご覧のていたらくである。


 でも数年前に、息子と観戦前にお好み焼き屋に立ち寄ったが、「今日は何ごとですか?」と尋ねられた。「今日はカープを見に来ました」と誇り高く言うと、「今日は野球がある日ですか?」という答えが返ってきた。それほどに市民の関心が薄れてきたのだ。


 今のカープの低迷にはこのような市民の関心の低さだけでなく、いろいろな要因があるように思える。原爆以後の復興の礎になったカープであったが、今はその復興も果たし、これからのカープは、違う意味をもたざるを得ない。


2 若手は伸びているか?
 カープはFAでよそから選手を取るのではなく、自前で養成するという理念をもっている。その理念自体は美しいのだが、そのシステムというのも、光る素材を探してきて、しかもいい指導をして初めて成立するものだ。しかしどうも理念通りにはいかない。以前にある内野手がドラフト一位で獲得したときには周囲は注目した。そして彼にかけてみたいというコーチの言葉を何度も聞いた。


 カープは実践を経験させてそして一人前にする。だからたとえ勝利は犠牲になっても、あえて出場させて経験を積ませなければいけない。しかし私には、今この犠牲にした時間が後に生かされてないように思える。期待されて出した選手は随分とエラーしたが、まだこれからの選手だからと当面は許されていたものだ。しかし守備はいまだにエラー続きで、しかもバッティングも消極的な選手が多い。時間を与えるのはもう限界と思える選手もいる。これにはコーチの指導の問題もあろうし、またスカウトの問題もある。スカウトに将来延びるかどうのかの見極めができていないようだ。


 また若手も出してもらえると思って甘えているのではないか。阪神は、チームを強くしようとして本気になった。それで野村にも星野にも頭を下げ、監督に招聘した。これはフロントの勇気である。しかしFAで強くなった点は、以前の巨人と同じ道を歩んでいる。金本は働くが、それだけ若手のチャンスを奪うことになる。カープは今がチャンスなのだ。若手を出せる。巨人のようにファンも勝利ばかりを言わない。ミネソタツインズみたいに。ところが若手がせっかくのチャンスを生かしていない。10月4日の栗原のバント失敗はその典型である。このバントが試合にどれくらいの重みがあるのか知らない。失敗したならファーム落ちというくらいの首脳陣の覚悟が欲しい。
 

3 コーチ
 いい選手を殺している面もある。河内の素材はどの球団も認める一級品だったはずだ。でもその素質を生かしていない。新井は新人の時に由宇で見たときには、振り幅が小さくて、軸のぶれないいい選手だと思った。初年こそいい成績を残したが、それ以後、期待されたほど伸びていない。今年は確かに調子がいいが、彼のバッティングを見ると、たとえホームランを打ったときでもいまだに軸がぶれるし、また調子が悪いときはバットが外から出ていく。素人から見てもよくないと気づくのだが、なぜそれをコーチが直せなかったのか。またピッチャーがバントを成功させるのも非常に珍しくなった。キャンプでは、ピッチング練習をやめてバント練習ばかりしろとでも言いたくなる。最近出てきた山崎がバントを成功させるとなぜかホッとする。


 大竹は素質のある選手だが、いいときと悪いときがはっきりしている。悪いときは明らかに球離れが早い。上原のように球をぎりぎりまで持つようになぜ指導しないのか。鈴木啓司という近鉄のピッチャーがいたが、彼の玉は球離れが遅い上に、指たこに引っかかって、いつもピットいう音からボールが放たれていた。

 また山崎ほど現役時代にすばらしい走塁をした選手が、いい走者をなぜ育成できないのか。福地のバッティングが伸びないのなら、なぜ高橋慶彦みたいにたたきつけるバッティングに徹させなかったのか。(後に福地は西武にトレードされました。生き生きとやっているようですが。)東出には、前でゴロを取るように強く指導しないのはなぜか。私には女子ソフトボール監督の経験があるが、前に出た方がイレギュラーバウンドに対応できることを見いだした。攻撃性が運動神経をとぎすますのかもしれない。あの高橋慶彦は強い打球でもけして後ろへは下がらず、横に食らいついて取った。その精神をどうして今の野手に教えないのか。天野は伸びのある球をもっている。それを生かすにはチェンジアップとか、落ちる見せ玉をマスターするしか活路はない。なぜそれをしないのか。(残年ながら天野は自由契約選手になった。面白い球を持っていたのに、それを生かす工夫がなかった。)


 前に竜というコーチがいたが、彼が指導するとみんなが同じような投げ方になってしまった。それほどの入れ込み方はしなくとも、指導した成果が見たいのだ。それと監督は、なぜセンスのある福井を使わないのか。(今年2006年はちょっと調子が悪そうだけど)


 厳しいキャンプをやってきたというが、前年の反省がまったく生かされていないようなキャンプをやって何の意味があるのだろうか。


4 スカウト
@名物スカウト
 カープの名物スカウトと言えば言わずと知れた木庭スカウトである。彼が衣笠を捜してきたエピソードは有名だ。衣笠の使っていた折れたバットを拾い上げたときに、「高校生でこんな重いバットを使っているか」と目をつけた。彼の入団以後はアメ車を乗り回して、一時は引退の危機さえ体験したのだが、後にあれほどの選手になった。


 九州地区ではいい選手を発掘している。その一人に、往年の代打の切り札宮川がいる。現在は宮川改めて村上となっているが、野村、緒方、そして前田と素材の優れた選手を次々と発掘してきた。喜界島の桃太郎侍、高橋英樹のような掘り出し物を捜してきたのも評価される。
 今でも九州からはいい選手を捜してくる。甲斐という選手を取ったときに、なんでこんな選手をと思ったが、年々着実に力を付けている。最初はひ弱さこそ否めなかったが、今は長打を飛ばすだけのパンチ力も付いてきたし、たとえ凡打でも基本に忠実ないいスイングをしている。金本も入団当初は細かったと言うから、今後に期待がもてる。おそらく性格もひたむきなのだろう。


Aスカウトの眼
 東出は野球センスとしてはいいものをもっているかもしれない。しかし積極性がいまだに出ないようでは成長はおぼつかない。その性格までスカウトは査定したのだろうか。ヤクルトに入団する投手がことごとく成功しているのを見ると、これはスカウトの差と思う。阪神が低迷したときにもこのスカウトの眼が指摘されたが、今はまさにカープにそれが当てはまる。お金を払える阪神ならまだしも、お金を払えないカープなら致命傷だ。高校生との接触を禁止されている現状では性格を見極めるのは至難の技かもしれない。しかし東出の消極性は今にはじまったことではない。それを見極められなかったスカウトの責任は大きい。その東出も、この前に由宇で見たときには、やっと前に出る積極性が見られて嬉しかった。彼の今後の踏ん張りを期待したい。そしてこう書いている今年2006年の東出は、良い活躍をした。ヒットが打てなくても、粘りに粘って相手投手を疲れさせた。やっと良い選手に成長したように思う。2軍で苦労した成果であろう。


 新井は見ての通り守備はうまくない。しかし、昨年から随所にいいプレーをするようになった。これこそキャンプでよくやってきた証だ。その意気込みを見抜いてスカウトしたのだろう。もともとあの程度の守備力ではドラフト線上には上らない(今年2006年は再びエラーが目立ってしまったが)。


栗原もいい素材だし、もちろん将来の4番をはってもらいたいが、走らなくてアウトになったあの事件が物語るように、ややどん欲さに欠ける。そのような性格を知っていたなら、積極さが出るようになぜ意識して鍛えようとしないのか。
 以前に長島清幸という選手がいた。確か、静岡自動車工業から入った選手だが、彼を指名したときになんでこんな無名な選手をと誰しもが思った。アスリートという雑誌によれば、お願いに上がった木庭スカウトは、高校の先生から「困りますよ」と言われたそうだ。学校では困るような性格でも、生死をかけたプロの世界では逆にいい性格となる。それを見抜くのもスカウトの眼だ。
 あの200勝をした北別府は、話によれば、高校時代から野球に傾倒しすぎた選手だったらしい。遠征の時も遊びに来たわけではないからと遊びに出ず旅館で体調を整えていたそうだ。ちょっと偏屈者くらいで初めてプロで成功する。
 

5 新しい組織
 現在のカープの低迷はけが人の多さに原因がある。野村、緒方、前田が走れたときには、確かに強かった。阪神が今上昇気流にあるのも赤星のお陰である。つまり赤星がフォアボールで一塁に出ただけで一点が取れる可能性が出てくる。可能性があることは、相手にとって出塁されること自体が恐怖だ。その恐怖が相手に新たなミスを生ませる。今のカープの足では、たとえフォアボールで出ても、後の2者がヒットを打たなければ生還できない。


 それでも広島市民球場で勝てるのは、球場が狭くてホームランが入るからだ。交流戦を見ればわかるように、広い球場だと、当然足があるかどうかで得点能力が決まる。前田はその打撃センスは絶賛されるが、足の面ではまさに足手まといにとなっている。また嶋はバッティングに関してはいい選手だし、肩もいいが、なにせ守備範囲が狭い。走れない選手が多いほど、いくら打っても勝てない。だから打てる選手と同じくらい走れる選手とか、守れる選手をバランスよく取ることだ。天谷のような足の速い選手が必要不可欠だ。それゆえにショート尾方の怪我が痛い。ごく最近出た松本高明は一種の光を感じるけれども。
将来できる新球場は広いグラウンドとなろう。その時を見すえて足のある選手を取らねばならない。


 やはり怪我を防ぐにはそれなりの専門家による科学に基づいた指導が必要だ。コンピュータのアソボウズの援助を受けないのは広島くらいだった。確かに勘に頼る野球もいいが、けが人は科学的にしか防止できない。医学の専門家を入れることが必要だ。


6 監督への注文
 また監督への注文だが、なぜ弱気リードの石原を使うのか。どうせ勝てないのなら、打てなくとも強気リードの倉をなぜ使わない。適当に強気のインコースを織り交ぜるし、しかもパスボールも少ない。ここまで失策が多いなら、まったく打てなくとも、せめて守備だけはいいという選手を使ってくれていい。倉のリードには、たとえ打たれても俺を信じて投げ込めという意気込みが伝わってくる。それが野手のすべてのプレーを積極性にさせるのだ。それで負けたら私も納得する。守りの要のキャッチャーがはじめから逃げのリードでは試合当初はごまかせても後半はばれて崩される。ただいくら強気でも、ある程度のコントロールが無ければ向こう見ずになってしまうけれども。
(今年2006年は、ブラウン監督に代わって倉の起用も増えた。石原も危機感をもってリードの精度を増してほしい。)


 また勝てないならせめて意表をついたセーフティーバントとかが欲しい。今のカープは策がなさ過ぎる。今は100本のソロホームランよりもたった1本の送りバントが見たい。


 また終盤ですでに順位も決まっているなら、全部生きのいい2軍を使ってみたらどうか。下手な分だけ、すべてに全力疾走を義務付けるとかの条件付きで。末永なんかももっと使って欲しいものだ。(今年2006年は末永の起用が増えたが、まだ足りないような気がする。私のような素人と違った見方を専門家はするのか。また給料をもっと上げてやりたい。あれではモティべーションも上がらない。)


 また野球というスポーツは信頼関係で成り立つ。特に投手と野手の信頼関係は大事だ。エラーをするとか、ダブルプレーを逃すと、あそこで取っていさえしたらという思いがいつまでも投手の頭によぎる。そのうちに集中力がなくなって投手の方が崩れる。そういうパターンがなんと多いことか。デイビーもそうだったし、黒田は勝てた試合も足を引っ張られて結局は負けた。それでも野手をかばい自分を責めていた姿は痛々しかった。


7 選手への注文
 
あのパリーグ合併騒動があってから、ファンあってのプロ野球ということが今一度見直されてきた。当たり前のことなのだが。カープのファームも、整理券を配って試合終了後にサインをもらえるというサービスを始めた。そこには企業努力が見て取れた。しかし数年前、バスで立ち去る選手たちに手を振ったところ、カーテンを閉められてしまった。疲れているのはわかるが、そのあたりの姿勢から問われる。前田のファンへの対応は、彼のパーソナリティからすると致し方ないかもしれないが。(言葉を翻すようだが、今年の前田の態度は野手キャプテンに指名されたからだろうか、例年と違う。インタビューの応対も丁寧だ。ブラウンはさすがだ。)


 選手の方から、今日は全力疾走の日とか、決めたらどうか。それと野球は選手だけでやっているわけではない。ファンの方にも顔を向けろ。勝った試合には、Jリーグみたいに整列してファンに挨拶したらどうか。


8 フロントへの注文
 FAが始まって以来、カープの選手が他球団に取られる事態が続いている。川口の場合は円満解決だったが、それ以降の江藤にしろ、金本にしろ、後味の悪い別れ方だった。その時に気になったのが、フロントの姿勢である。「金をつり上げるならそれに乗らない」という姿勢のことだ。確かに選手もプロだから才能の見返りとしてのお金は欲しい。しかし選手はそれだけでやっているわけではない。自分が必要と言われると、人間というものは自然とやる気を出すものだ。


 江藤も金本も移籍前の1年間はひどいものだった。自分が球団に必要とされているかどうか確信が持てなかったからだ。想像するしかないが、球団の誠意が足りない結果、やる気を失せたのではなかったか。「お金はなんとか精一杯工面したいが、それより君がなんとしても必要なんだ」となぜ言えない。球団の経営状態を率直に数値で示した上で、精一杯の誠意を見せたのだろうか。
(2006年のシーズンオフはフロントはよく頑張った。黒田をよく引き留めてくれた。それ以上に頑張ったのはもちろんファンである。)


 後に日本ハムに入団した木田の獲得に乗り出したときに見せた、家まで付けようという意気込みはどこに消えたのか。低迷カープに活をいれるため、当時5000万円をかけてアメリカのツーソンキャンプを決行した意気込みはどこに行った。はじめての青い目の監督(ルーツ監督)を迎え、負け犬からの脱皮を図った意気込みはどこへ消えた。選手に重い荷物を担がせぬため、トラックでの荷物移動を考えついたあのアイデアももう湧かないのか。確かに今年の犬のミッキー企画は当たったけど。でもこれからもミッキー頼みでは心もとない。


 また試合中にホームランを打った選手にインタビューする企画がある。これは球団がテレビ局に許しているのだろうが、選手からすれば集中力が欠けるので、してほしくない企画だと思う。いや絶対すべきではないと思う。するのなら、勝った試合でヒーローインタビューをながながとすればよい。ライトスタンドでみんなで掛けって行って、ファンとともに万歳をすればよい。


 現オーナーの言葉も気になった。前田が怪我で低迷していたときに、「あの子は痛がりですから」と、まるで子ども扱いの言動である。選手を一人前として見る姿勢がまず必要だ。オーナーの世襲制も仕方ないのかもしれないが、本当の改革のできるオーナーが必要だ。
 

9 球団経営 −お客のためになすべきこと−
 確かに前よりもいろいろな券の買い方ができるようになった。○○セットとか、家族で行く場合は助かる。またコンビニでも、インターネットでも券を購入できる。しかし球場に行って驚くことがある。ストライクセットを頼んで行ったが、周りに観客がいないのに狭いところに数組の家族がぎゅうぎゅうに押し込められた。機械的に割り当てただけで、快適さへの配慮を忘れている。隣のお母さんは明らかに怒りを顔を表していた。結局サービス券が終了する頃には、他の空いている場所を探したが。また活躍した選手に贈る商品をアナウンスするが、人にやる商品なんか聞かされても苦痛以外なに者でもない。すべて客に配るべきだ。


 今は子どもだましの企画は少なくなったと思うが、どうせ客を呼ぶなら先行投資も必要だ。あのヤンキースタジアムではお客にライト付きペンを配っていた。子どもだましの企画ではない(とは言ったもののやはりすぐに壊れました。)

10 市民への要望
 広島人は飽きやすいと言われる。しかしけしてそんなことはない。それどころか、進取の気鋭があると確信する。以前市内電車に乗ったときに、スズメバチが入ってきて女性客が嫌がったとき、まっさきにそれをはたき落とそうとしたおじさんがいるのも、広島だけだ。心はいつも熱い。しかし、カープの歴史的な意味が薄れてきたのか、カープを生き甲斐にする人が確実に少なくなっている。前にも述べたが、犬の散歩に必ずラジオを持つ人が今何人いるだろうか。


 ファンはお行儀がよくなったが、その反面弱くなるとさっさと去る。できの悪い息子を叱るように、負けても負けてもヤジを飛ばしにやってくるファンがどのくらいいるだろうか。バックネット裏の客の少なさにも気になる。年間指定席は、チームのためにお金を捨ててもいい人が買う席である。


 今は少々のエラーをしようが、怠慢プレーをしようが、ファンは寛容だ。応援ラッパに消されてヤジを言おうにも、届かないという方が正しいのかもしれない。でもあんなエラーをした選手に、打席に立ったらまた応援を送るというのは、どうも腑に落ちない。アメリカみたいにブーイングをしたらよい。
  

11 カープのめざす像
 
原爆の復興の証として、カープは市民に光をともしてきた。しかし時代はすでに変わっている。中国四国の新しいスポーツ舞台としてのカープはどうか。それこそ若手選手の檜舞台として新球場が必要だ。私は広島夢球場と自ら名付けていたが、奇しくも同じ名称になりそうな気配である。ヤード地の新球場は新生カープのイメージにぴったりだ。ソフトバンクホークスは九州中心に選手を集めて成功している。カープも中四国に絞っても有能な選手はたくさんいる。それだけに今からあこがれの舞台を用意しておくべきだ。プロをめざす高校、大学生のあこがれの的となる球団に是非育って欲しい。