支持療法

  有斐閣の心理学事典(中島他 P132)によれば、その基本は、傾聴、受容、共感、支持に基づく陽性転移をアプローチの柱とするという。それはできるだけ退行(欲求満足の様式が前に戻ること)を避けながら現実に沿った形で治療を進め、状況に応じて教育、助言や指導、カタルシス(心の浄化)、解除反応、暗示、説明、説得、保証などの技法を用いるという。

  また培風館の心理臨床大辞典では、患者のもつ不適応の原因を直接問題にするのではなく、受容的共感的態度でその苦しみを理解し、その理解を伝え、患者を支えることによって、患者自身が再適応を獲得するように導くものとある。患者が病的な状態にありながらも健康な面を残ししてその部分で適応への現実的な努力をしているなら、治療者がそれを指摘することは患者の自信につながり、不安を軽減する。適応の仕方を根本から変革しようとするのではなく、患者の適応能力を支えることに主眼をおきながら困難な状態から自然に回復していくのを待つ方法である。必要ならば説得、励まし、保証、暗示、助言などが加えられる場合もある。


  また弘文堂の新版精神医学事典には、「治療者は、患者の苦悩に対する関心と共感に基づき、患者の補助的自我、代理的自我の役割を担い、現実検討力をたかめ課題解決を図る。したがって患者には陽性転移が生じやすいが、その治療関係を維持しながら患者に過度の依存や退行が生じないように操作している。・・・また直面している処遇困難な問題や病状に対しては十分に説明したり説得したり、自信を与え励ましたり、保証を与える」とある。
 
しかし村瀬孝雄が以前に精神分析療法について、過去をふり返るというつらい作業を患者はしなければならないと指摘していたのが印象的で、やはり支持されながらも、過去をふり返るのは患者自身ということになる。